地震災害の報道を見てその被害を他人事のように感じていませんか、今マグマグニチュード6又は7程度の地震があったとき彼方の家は大丈夫なのでしょうか?まだ間に合います市町村の担当部署に相談してみましょう。
03.2.2 「朝日新聞私の視点」より 京都大学名誉教授 小堀鐸二
阪神大震災が8年前に残した最も重い教訓の一つは、6,400人を超える死者のほぼ8割近くが、瞬時に倒壊した古くて弱い建物の下敷きになって亡くなった事である。
こうした無残な犠牲者をなくすために、既存の建物の耐震性を高める目的で「建築物の耐震改修の促進に関する法律」が95年に制定された。だがなぜか罰則規定もなく、単なる努力規定にとどまったために、81年以前の耐震基準で建てられた古くて弱い建物(既存不適格建築)の多くが耐震補強はもとより、耐震診断すら受けないまま放置されることになった。
最近、中央防災会議は東海地震と南海地震が同時に発生した場合の被害を試算した。建物の倒壊は28万棟に及び、これによる死者は7,400人とされている。この想定について、ここで論ずるつもりはない。
それよりも、このままではわが地震列島のどこかでひとたび強大な地震が起これば、阪神大震災の教訓が生かされることなく、似たような惨事が繰り返されてしまうことを懸念している。国はこの問題を横においたままでその根源を打破しようとしていないように見える。一方、日本は建築構造の性能設計にかかわる耐震・免震・制震といった地震工学の最先端技術の研究が、世界で一番進んでいる。だが、こうした誇るべき技術も、それが社会に受け入れられて市民がその恩恵に浴することがなければそれはないのと同じだ。
現状を打開し、進んだ技術を社会に根付かせるためのひとつの試みとして、国や地方自治体レベルの防災会議が参加する「コンセンサス会議」方式を導入してはどうだろう。
この種の会議体はこれまで、高度の専門化のみの意見に基づいて進められてきた。そのため、市民は自分たちの安全にかかわる問題を含んでいることが分かっていても、専門家に期待する以上の事を自分たちの問題として考えることができなかったのではないか。
だいたい「既存不適格」という用語自体、一般市民の耳に入りにくい。いくら識者によって「既存不適格がよくない」と繰り返されても、その内容が十分に理解されているとは思われない。古くて弱い家に住んでいる人は、それが「キソン・フテキカクなのだ」と言われても他人事のようで、それほどの不安も抵抗感も実感することがなかったのである。
防災会議に市民が参加していければ、市民の防災意識に大きな影響を与え、キソン・フテキカク建築の耐震診断・補強の実施に言うに及ばず、これからの地域社会のあるべき姿を視野に入れた地震防災の「備え」を一段と強固なものにしていくに違いない。
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